2014年6月5日木曜日

基礎分子物理化学 - KEITH A. McLAUCHLAN

 
名前の通り、物理化学の基礎のテキストですが、巻末を抜いてなんと131ページしかない。
この本は副読本という立ち位置を狙っているそうで、確かにそのような内容。

普通物理化学というと、まずは熱力学なわけだが、この本はアプローチが異なる:

今日では原子や分子の存在及び特性は確立されており、個々の原子や分子に対して実験ができるようになっている。これにより、実験対象をこれまでと違った見方をすることができ、原子や分子の特性から、それら集合体の特徴的なふるまいを導き出せるようになる。これは、化学の学校レベルの教え方としてふさわしいと言える。
こういった分子論から物理化学を始めていく教科書は他にもたくさんあるが、まずこのテキストは量子論史に沿っていない。よく出てくるリュードベリ定数も出てこないし、光電効果やプランクの式も冒頭に出てこない。本書はまず、「原子・分子の熱容量(エネルギー)には何が関係してくるのだろうか」ということから始める。ゆえに、まず出てくる数式は原子の平均エネルギー( <E> = 3/2 kT)である。

そう考えると、本書は物理化学というよりは統計力学かもしれない。よく知られた量子力学の法則・定理・公式を素直に上げ、それらを用いて実測値は説明できるのかどうか、という視点からはじまる。

量子力学に真っ向から挑みたい人にはつまらないこと必至であるが、分光学、エネルギーの話等々、やや実学的に量子力学の役割を学ぶにはもってこいのテキストだと思う。


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